アバンギャルドさNo.1、斬新すぎた「Mugaritz」

サンセバスティアン郊外にある、星付きレストラン「Mugaritz(ムガリッツ)」。 
市内からタクシーで20分ほどいくと、山道に突如レストランが現れる。敷地は広く、外には木製のテーブルや椅子が置かれ、ゆったりとくつろげる雰囲気。馬や牛があちこちに見られ、山の空気はひやりとして気持ちいい。

客層は白人の外国人客が多く、きちんとドレスアップした人がほとんど。近頃シックなレストランでもTシャツ短パン姿で平気な客に内心イラっとすることが多かったので、「そうそう、やっぱりいいレストランはこうでないと」と嬉しくなる。


二つに割れたお皿のオブジェが各テーブルにあり、カトラリーがない。変った演出、と思っていたら、この後に続く衝撃も相当なものだった。 後半まで、ほんとうにカトラリーが出てこない。これは、手で食べるものなのか、と迷うメニューもあり、実際食べにくいものも。

(小皿料理が24皿つづき、デセールへ)

ぬるりとしたいわしのパスタ、ぐにゃりとしたライスケーキetcテクスチャの異質感、見た目がたわしのようなカネロニ、クセのある香りが強調されたチーズのメレンゲ(歯にくっつく)、フローズンのカニの、カニの存在感のそこはかとなさ。聴覚以外の感覚が、全身全霊で「なにか、とんでもないことがおこっているぞー!」と訴えている!これはわざとなのか……と思うほど、摩訶不思議な料理が、デセールまでの間に、なんと24皿続く。途中で、その難解さに、もはや笑いがこみ上げてきた。

唯一、素直に美味しいと思った、フレッシュのヘーゼルナッツ。野菜とナッツの中間のようで、食感と風味がいい。


アペリティフはシャルトーニュタイエ、最近レストランの1杯目に見かけることが多い。

リストは、気候別に分かれていた。


ワインリストは、ざっと見たところ、どことなく自然派寄り。ペアリングコースもあるようだったが、20皿以上の料理にペアリングすると忙しそうなので、無難にボトルでシャンパンを頼むことにした。Françoise BEDEL(フランソワーズベデル)の「Entre Ciel et Terre」。土っぽさと独特の酸味、華やかさはないけれど、食事を引き立てくれるシャンパン。結果的に、料理と向き合うのに手一杯だったので、いいチョイスだった。


サービスはよく、途中広いキッチンに案内してくれた。中国系の若いサービスの女性が、やや早口の流暢な英語で誇らしげに説明してくれる。「世界のベストレストラン50」2016では7位にランクインしている同店、さすがと知名度も抜群だけに、世界中から集まったスタッフが、忙しそうに厨房を行ったり来たりしていた(約40人いるという)。その40人が結集して、あの斬新な料理を造り上げるのだから、もはや、すごいの一言に尽きる。

今まで行ったどのレストランよりも、アバンギャルドさではダントツ。もはやジャンル分け不能な斬新な料理に、「食って、奥が深い……」と深妙な面持ちで店をあとにしたのだった。