美食家はバスクの山奥をめざす、「Asador Etxebarri」

美食家の夫が「ここに来るためにバスクまで来た!」と意気込むほど楽しみにしていたのが、「Asador Etxebarri(アサドール・エチェバリ)」。 
「世界ベストレストラン50」2016で10位に輝く世界のトップ・レストランが、バスクの山奥にある。ビルバオからタクシーのほうが近いが、私達はサンセバスティアン(地図上ではドノスティア)から行ったので、車で1時間ほどかかった。

私は前日の慣れない日光浴による頭痛に車酔いが重なり気分が優れず、車のなかでずっと横になっていた。「こんな山奥まで遠路はるばる来たけど、食べれるかなぁ……」とかなり心配だったものの、車外に出てマイナスイオンいっぱいの空気を吸い込むと、自然と気分は回復していった。


古い石造りの、一軒家レストラン。まわりは見事に山、山、山。近くの牧場では、馬が草を食んでいるのが見える。

中に入ると思いのほかモダンで、センスの良さを感じさせる。窓際の、奥の席に案内してもらう。さっきまで空を厚く覆っていた雲が晴れ、窓から見える青と山の緑が眩しい。

せっかく来たので、欲張りコース「Tasting Menu」を。手紙のようなメニューの紙も、パンを入れる袋も、バターナイフも、家に持ち帰りたいくらい、全部かわいい。


昨夜の「Mugaritz」では難解さに頭を抱えた二人。チョリソーを挟んだサンドイッチをぱくりと頬張り、顔を見合わせると、「素直においしいって、いいね……」と笑った。 
「アサドール(スペイン語で、バーベキューの意味)」というだけあり、薪の香りがしっかりとついたチョリソーの旨味、香ばしいパンの風味に、思わずため息がでる。

見たことのない謎の生物カメノテや、ほれぼれするくらい美しい容器に入った、真珠みたいなオイスター、肉厚な”White tuna”は、トマトとししとうで白・赤・緑のバスクカラー(バスクカラーはイタリアンカラーと一緒!)。

もう何を食べても「うまい、うまい」の連発なのだけれど、感動したのは史上最高にジューシーだった”Prawns of Palamós”(パラモス産の赤海老)! 
この海老を食べに、もう一度いきたいくらい。


チョリソーから始まり、10品程度が出て、さらにココチャもサービスで頂いたりして、メインの名物料理”Beef chop”にたどり着く頃には、お腹、すでに満腹寺……


火入れも絶妙で、噛むほどに旨味が増すおいしいお肉なのに……2切れ食べるのがやっと。 
隣の地元人らしき家族を見ると、小さな子どもですら、ぺろりと頬張っている。ほんとに外国人の胃袋にはかなわない。

全部食べきれずに残した我々に「No good?」とサービスの方は心配そうに訪ね、さらに残ったお肉は、テイクアウトで持たせてくれた。

ワインは、ドニ・モルテのGevrey Chambertin、2013年のもの。久しぶりに飲むブルゴーニュが、毛細血管に染みわたっていくよう。


13時に店に入り、エチェバリで働いている日本人シェフ、哲郎さんに厨房を案内してもらったりしていたら、店を出る頃にはもう夕方16時半過ぎ。
バスクの山道をタクシーは走っていないだろう、と行きのタクシーに15時半に迎えにきてもらうよう頼んだのだが、「ノー、16時半のほうがいいよ」と運転手さん。 
まさにその通り。「えー、ランチだしそんなかからないでしょ」と思っていた我々が、甘かった。
どうりでスペインではディナーののスタートも遅いわけね、と納得したのだった。