思えばスペインにきてから、食べ続けている。
1ヶ月バカンスで滞在するなら話は別だが、こちらは時間の限られた旅行者、行きたいお店を回るため、昼も夜もレストランの予約を詰め込んでいた。
バスクの山奥にある「Asador Etxebarri」からサンセバスティアンに帰り、3時間後には、もうディナーの予約時間がやってきた。
向かった先は、ミシュラン3つ星「Martin Berasategui(マルティン・ベラサテギ)」。
街中のホテルからタクシーで20分ほどの郊外にある、緑に囲まれた一軒家レストランである。
しかしながら、全くお腹が空かない……夕方腹ごなしに街を散歩したりもしてみたが、ランチのボリュームがすごすぎて、一向にお腹が空く気配はない。
せっかく3つ星レストランにいくなら、朝から断食するくらいがいつもの私なのに!と思いつつ、店内へ。
天井も高く、洗練されたシックな空間。
さて、ワイン、ワイン。リストをねめ回すようにみてしまうのは、職業病のようなもの。
ワインリストは、日本ではあまり見かけない分類の仕方。国別でも、泡・白・赤のような単純なタイプ別でもなく、「Atlantico(大西洋)」「continental(大陸)」「meridional(南部)」など大まかな地域で分類されている。スペインワインは特にこまかく地域別に別れ、たとえばリオハひとつでも、「Rioja Alta」と「Rioja Alabesa」で地区別にきちんと分かれている。
(珍しく)グラスワインのリストも豊富で、白赤各1ページずつ揃っている。だがボトルをゆっくり時間をかけて飲む心地よさに慣れた私たちは、ここでもなにか1本頼むことにし、ソムリエにワインをおすすめしてもらう。
「二人とも、ピノノワールが好きなので、エレガント系がいいな。せっかくなのでスペインのワインをお願いします♡」とリクエストし、出てきたのは、珍しいリアス・バイシャスのカリニャン。
土の風味が豊かで、やや果実味に乏しく、ふたりともあまり杯が進まない。ボトルで好みでないと辛いね、と笑う。
料理のメニューを見ると、メニューが考案された年が記されているのが、珍しい。
コースはさすがに厳しいので、アラカルトでひとり2皿ずつ(1皿はハーフポーション)とココチャを頼み、シェアすることにした。
メインの小鳩の、断面の美しさといったら……
ダーリンのリエーブル・ア・ラ・ロワイヤルは鼻血が出そうなほどの凝縮感。
(宮崎駿作品に出てきそうな、ミニャルディーズ用のオブジェ)
21時からスタートしたディナーは1時間半ほどでさくっと終わり、帰ろうとした22時頃にどやどやと男性グループが入店。うちそろってアペリティフに、カクテルで乾杯しはじめた。
涼しげなジンライムがようやく訪れた夜に溶けて、粋だと思った。
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