ピッツァとファランギーナ大作戦!?

食・ワイン

さてアリアニコのお次はファランギーナ。カンパーニャ州が全世界の95%(3400ha)、うちサンニオが85%(3000ha)を占めるというサンニオ地方が誇る白ぶどう品種です。

あまり日本ではなじみがないかもしれませんが、特にアメリカやイギリスでここ十数年で人気が高まっており、対前年比だと全世界で16%輸出増(アメリカは+33%、イギリスは+5%)だそう。※2022/2021

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さてファランギーナのワインの特徴ですが、これが一口でいうのが非常に難しい。

私のそれまでのファランギーナ観=素朴でちょっと大味で酸が緩めで柔らかくて、なぜかいつもバナナの香りがするワイン、という勝手な印象を持っていました。

それが、現地に行ったら見事に覆されました。

まずファランギーナが、とても万能な品種であること。

タイプとしては辛口白ワインが主流ですが、今はスパークリングワインの需要増に伴いスパークリングの生産も増えているそう。シャンパーニュ方式とシャルマ方式どちらも造られており、シャンパーニュ方式は全体の2割ほど。

(シャンパーニュ方式で48ヵ月熟成のかなり複雑なタイプ)

一番気に入ったNifo Sarrapochielloのスパークリング。シャルマ方式で12ヶ月熟成、残糖10g/L程度。オレンジピールやストーンフルーツの香り、心地よい酸。シャルマにしては比較的長い熟成による細やかな泡、かつ果実のフレッシュさと軽やかさがあり、味わいのバランスがよく伸びやか。

(現地の生産者には大声で言えませんが、個人的にはシャンパーニュ方式よりもシャルマ方式で造ったスタイルのほうが好み…ファランギーナのチャーミングが活かされている感じがしました)

 

そして特筆すべきは、エクストラ・ドライ(残糖12~17g/L)のワイン率も多かったこと。ブリュット表記のワインも、よくよく聞くと残糖を境界ぎりぎりに寄せていたので、残糖は少し残す、というのが主流のよう。

その理由はさまざまあると思いますが、大きな要因にファランギーナの酸の高さがあると思います。ファランギーナのセッションで試飲したワインはすべて2022/2021ヴィンテージだったのですが、どれも酸を高く(mid+ 以上)を感じました。

辛口白ワインの場合は、培養酵母を使い、ステンレスタンクで低温発酵&熟成して品種の特徴を前面に出すことが多く、樽熟成は少数派。遅摘みしたぶどうや特別な品質と判断したものは樽熟成することもあるそう。

(Masseria Frattasiのファランギーナ。12月上旬収穫とかなりの遅摘みで樽熟成6ヶ月、アルコール14%で果実味が凝縮したスタイル)

そのほかパッシートのワインも造られています。

このNIFO(先ほどのスパークリングと同じ造り手)のパッシートが素晴らしかったです!ナチュラルで16%のアルコール、酸があるので甘ったるくなることもなく、カンパーニャ産のペコリーノチーズにぴったり。

(ちょうど乾燥して1週間経った状態のファランギーナも見せてもらいました)

 

さてファランギーナの特徴ともいえるバナナ香。なぜバナナの香りが感じられるのか、品種の香りなのか、醸造からくる香りなのか…この解明がファランギーナのセッションで興味を持っていた点でした。

マエストロPascual Carloさんの解説によると、ファランギーナの品種の特徴は、りんご、バナナ、レモンの花ユーカリ、ユーカリ、トロピカルフルーツ、松のとげ(どんな香り?!)、など。

ただし面白いのが、少し熟成させると途端にフレーバーが変化すること。若い時(6ヶ月熟成後)はバナナとりんごの香りが強く、1年半後にはアプリコット、ハチミツの香りが強くなってくるそうです。
 

そしてこれは個人的な感想ですが、熟成したものの中には酸がゆるいものもあり、若いうちは酸が高くても、落ち着くのが早いのかな?という印象を持ちました。

とはいえまだまだ研究中のファランギーナ。カンパーニャ州でも古い歴史を待つ協同組合であるCantina di Solopacaでは、テロワールを理解するため、さまざまな取組みを行っています。
例えばこの地方に分布する粘土、石灰岩、クオーツなど土壌がワインに与える影響も研究中だそう。


ちなみにこのカンティーナ・ディ・ソロパカですごい光景を目撃。


まさにガソリンスタンドならぬワインスタンド。
ワインが文化として根付くとはこういうことなのか…と衝撃でした!

 

また今回はあまり飲む機会がありませんでしたが、例えばナチュラルワインの生産者のなかには、アンフォラで熟成したり、長めにマセラシオンをしたり、新たな試みをしている生産者もいます。

初日に行ったナポリ市内のワインバー「Vineria Indovino」で飲んだファランギーナは、まさに新世代の造り手のもの。サンニオ地方でも増えつつある耕作放棄地を復活させるプロジェクトを行っている生産者で、このファランギーナが1st ヴィンテージだそう。オレンジの皮の香り、ほのかな渋みと余韻のスパイシーさが魅力的なオレンジワインでした。

 

そして今回、現地でとても盛り上がったのが、ファランギーナとナポリピッツァとのペアリングの妙。ナポリで訪れたピッツァの名店に行くと、現地では飲み物は「ビールかコーラかファランギーナ」がお約束とのこと。

もちろんワインを学びに来た我々は、ファランギーナをチョイス。

供されたファランギーナは、いわゆるバナナ香のする典型的なフルーティーで飲みやすいタイプで、ワイン単体だと少しフラットに感じたのですが(失礼)、ピッツァと合わせたらあらびっくり。

特にトマトソース系のマルゲリータとマリナーラ系との相性がとても良く、ワインはファランギーナ一択というのも納得したのでした。

(リコッタチーズとサラミ、ズッキーニの花のピッツァ。さすがに美味しいけど…ファランギーナと合わせるならトマト系がおすすめ!)

 

べネヴェントの街ではピッツァ造り体験も。

もちろん合わせたのは…

日本のピッツァ屋(特にナポリピッツァのお店)さんは、ファランギーナを絶対オンリストすべき、と語り合いました。
Pizza & Falanghina(ピッツァとファランギーナ)、日本でも流行りますように!

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