刺身やお寿司などお魚天国日本。魚介類の消費量はアイスランドに次ぎ世界第二位だそう(農林水産省調べ)。魚介とワインと合わせて、なんともいえぬ生臭い感覚を味わった人は多いのではないでしょうか。
そんな不快な「生臭み」のしくみを研究しているのがメルシャン。その研究結果をセミナーでレクチャーしてもらってきました。
よく「シャンパンにキャビアが最高♪」といいますが、それって本当?を解き明かすべくテイスティングに用意されたアイテムは、数の子、ホタテの貝ひも、サワークリーム。
オーノー。魚卵嫌いのわたくしにとって厳しいテイスティング……と思いつつ、仕事と割り切り数の子をぱくり。
う……マリアージュどころか完全離婚しちゃってます。
どうして別々に味わうとおいしいのに、一緒にすると破綻するのか……人もそうですよね。互いの良さを高め合えない哀しさよ……。
この「生臭み」を生む一因は、ワインに含まれる鉄分。
鉄が魚介の脂質とくっついて、あの独特の臭さを生むのです。魚卵は不飽和脂肪酸の塊なので、ワインとの相性がもっとも悪い部類。
ちなみに生臭さを感じるのは味覚ではなく嗅覚だそうで、鼻をつまんで食べると臭くはないそうです……、って苦行ですね。
講師のかたのナビゲートに従い、次はサワークリームをつけて試してみます。
う……?さきほどの生臭みが緩和され、ベストではないもののなかなかいけるではないですか。不思議。
このメカニズムを解明したのが、メルシャンです。
どうやら油脂分をプラスしてあげると、油が生臭み成分をコーティングしてくれるため、臭さが鼻に抜けず不快感を抑えてくれる効果があるそう。ヨーロッパではオリーブオイルやバターを多用するので、ワインと自然に合いやすいというのも納得できます。
油分でコーディングしなくても、ワインのなかの鉄が少なければ生臭さは緩和されるはず……と技術(フードマッチ製法)を駆使してつくったのが、「ビストロ」。
ほたての貝ひもに、一般的なシャルドネの白ワインと「ビストロ」の2つを合わせて比較しましたが、「ビストロ」のほうがたしかに生臭さは緩和されました。
つまり「生臭み」に対処するには、
①料理に油脂分を足してコーティングする
②鉄分の少ないワインを合わせる
というふたつの対策があることがわかったのですが、気になったのは、鉄分の少ないワインの見分け方。
鉄分はどこからくるのか。
皮にもともと付着していることもあれば、製造段階(ステンレス容器や醸造設備)等からつくものもあるようです。
ぶどうの品種による差はあまりないとのことでしたが、たとえば砂鉄を含んだ土ぼこりが舞うような畑では自ずとぶどうに鉄分が付着する確率もでてくるし、土壌の差はあるそうです。
ひとが鉄分の存在を知覚できれば、「うん、このワインは鉄分豊富だ!」など自分の経験値もあがりそうなものですが、鉄は自分では認識できないらしいのです(機械が必要)。
「それでは鉄棒のかおりはどうなんですか?」と指摘すると、あの血なまぐさいような、鉄棒を触った時のにおいは、自分の手の脂質分と反応して生まれるんですって。納得。
生臭さの破壊力はすごくて、グラスに残ったワインにもその生臭さがついてしまうんですよね。
お店で魚介とワインを出されるときは、ぜひこまめにグラスを変えてもらいたいものです。
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