「レザンファン・ギャテ」× 「COCO FARM WINERY」メーカーズディナーレポート

食・ワイン

日本ワインの魅力をもっと伝えたいーという想いから生まれた、日本の美食×日本ワインのコラボレーション企画。 

前回<SAYS FARM×Abysse>に続く今回は、代官山フレンチ「レザンファン・ギャテ」と栃木県「ココ・ファーム・ワイナリー」のコラボレーションが実現。ワイナリーより醸造責任者の柴田豊一郎さん、栽培担当の石井秀樹さんを招き、醸造や栽培のお話を聞きながらの濃密な時間となった。

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レザンファン・ギャテ

宝石のようなテリーヌ・コレクションをスペシャリテとする代官山「レザンファン・ギャテ」。8年連続「ミシュランガイド東京」1ツ星を獲得した松澤シェフが作り上げる、独創的で精巧な直径10数センチのテリーヌは、「小宇宙」「食べる宝石」とも称され、店名の通り「レザンファン・ギャテ(=我が儘な子供たち)」を魅了し続けている。

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今回、料理がサーブされる毎に説明をしてくれた松澤シェフに感謝。 
「あんな美しいテリーヌを造る松澤さんって、どんな人なんだろう」
Special Interviewはこちら>>『進化しつづけるサムライー「レザンファン・ギャテ」松澤直紀』

COCO FARM WINERY
栃木県足利市にある「ココ・ファーム・ワイナリー」は、もともと指定障害者支援施設「こころみ学園」からスタートしたワイナリー。

社会貢献だけでなく、ワインも非常に品質が高く、そのレベルは九州沖縄サミット(2000年)、北海道洞爺湖サミット(2008年)で各国のVIPに供されるほど。 さらに今回は、このコラボイベントの為に、2015年7月発売の「NOVO BRUT 2011」を一足早くご用意して頂いた。

まずは「レザンファン・ギャテ」齋藤支配人からの一言。

「通常営業では、フランス料理とフランスワインを主に提供していますが、日本ワインは普段のマリアージュの仕方とは考え方とは違うと思います。

普段は食材のアタックとワインのアタックをぶつけるようなマリアージュであるのに対し、日本ワインの場合は、食材を噛んでるうちに徐々に寄り添ってくるような余韻が長いマリアージュ。

今日の会では、フランスの格付けなどの先入観は取り払って、皆様自身で色々なマリアージュの形を見つけながら、愉しんで欲しい」

そして、柴田さん・石井さんの挨拶の後、できたてほやほやの「NOVO BRUT 2011」で乾杯し、会はスタート。

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さっそく、今回特別に造って頂いたテリーヌ達と足利ワインのマリアージュを見ていこう。

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「NOVO BRUT 2011」 × 「栃木産トウモロコシとアオリイカの小さなテリーヌ」

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「のぼ」は、日本の伝統的なブドウ品種から造られる、シャンパン方式のスパークリングワイン。品種は、リースリング・リオンという珍しい葡萄100%。

このワインは「リースリング・リオンは、スパークリングワインにしてみたら面白いものになるのではないか」という思いつきから、まずは自分たちのために試しに造り始めたものだそう。

そして2000 年、沖縄サミット晩餐会の席で「のぼドゥミセック 1996」がサーヴィスされたことにより、このワインは一躍脚光を浴びることとなる。 基本的には毎年ドサージュを添加しない造りで、かなりドライ。
言われなければ、日本のワインとはわからない高品質なスパークリング・ワインだ。 栃木の食材を多く取り入れようと栃木県産のトウモロコシを使ったアミューズ・テリーヌ。フォアグラがいいアクセントとなっている。

「プティマンサン 2013」 × 「鱧、水菜、長芋、インゲンのテリーヌ コンソメで煮含めた焼きナスのピュレと梅肉、大葉のヴィネグレットソース(プティマンサン使用)」

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季節の鱧をメインに、「日本の涼」をギュッと一皿に詰め込んだような一品。焼きナスのピュレは単体で食べても旨味たっぷりで美味。梅とヴィネグレットの酸味が夏の暑さで弱った身体に優しくしみ込んでいく。 冷やした日本酒にも合いそうな和の雰囲気のテリーヌだ。 プティ・マンサンをふんだんに使用したテリーヌに、当のワインが合わぬ筈がない。

可能な限りベストなワインを造ろうという新しい試みが、この“こころみシリーズ”。 こころみ学園の畑の葡萄から良質の白ワインをつくりたいという願いから、世界各地の産地を調べ、実際にテイスティングをし、そして見つけたのがプティ・マンサン。

フランスの南西部、ピレネー山脈の麓で栽培されるこの葡萄は小粒で房も小さく、いきいきとした酸味を持つのが特徴。2006 年から栽培を始めたが、足利の暑さにも耐え、美味しい酸を残したまま、よく熟した葡萄を収穫することができたそう。優秀な子なのである。 

ワインのボリュームからしてみれば、次の「農民ドライ」を先に出すのが普通だが、料理の順番と、その料理とのマリアージュを優先させた結果、「プティマンサン」を先に供出した、という松澤さん。まずは料理を中心に考え、それに合わせてワインを考える……レストランの「常識」が、普段ワインを中心に考えがちな「ワイン・ラヴァー」にとっては、新鮮に感じられた。

「農民ドライ 2014」× 「地鶏胸肉と豚足のテリーヌ パセリの香り 根セロリのレムラード添え(農民ドライ使用)」

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このテリーヌにも「農民ドライ」を使用している。 「農民ドライ」は軽めでスッキリと飲める、手ごろな価格の白ワイン。どんな軽めの料理にも合わせやすく「特に取り立てて言う必要も、深く考える必要もありません」ということがコンセプトの「日本の小粋な白ワイン」だ。

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実際に口に含むと、確かに「深く考える必要もない」ほどに、料理とワインを口に運ぶ手が動いてしまう。あっという間に料理もワインも無くなってしまった。真のマリアージュとは、合わせようと意識しないものなのかもしれない……と思わず考えさせられる、驚きのマリアージュだった。

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「農民ロッソ 2012」× 「焦がし豚肉のリエットとジャガイモのテリーヌ 砂肝とクレソンのサラダ」

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農民ロッソを飲んで、焼肉たべてぇー(叫)!!」と松澤さんが思ったことから生まれたという一品(笑)。
強いものに強いものを合わせる「かけ算」のマリアージュではなく、豚肉の脂を農民ロッソで洗い流す「引き算」のマリアージュが日本ワインらしい。周りはエゴマの葉というところも、焼肉を彷彿とさせる。
色鮮やかなチェリーのピクルスがアクセント。

そして、「農民ロッソ」。
ワインの王様、ボルドー品種をメインに使いつつ、ボルドーの真似をせず、 我々が好む日本のワインを目指して造り始めた結果が、このワインだという。ボルドーワインを飲む時は、背筋を正して向き合って飲まなければいけない緊張感があるが、この「農民ロッソ」は良い意味で肩の力が抜けるワインだ。1家に1本は常備したいところ。 

「陽はまた昇る 2012」× 「仔羊スネ肉のタロッコオレンジ煮込みとビーツの温かいテリーヌ スモークビーツのクリームを添えて」

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うーん……。思わず唸ってしまったこの美しさ。

「陽はまた昇る」に合わせ、まさに太陽のような鮮やかなオレンジ色のテリーヌは、ブラッドオレンジとビーツな鮮やかな色調が存分に活かされている。目に見て楽しく、食べて蕩ける。

テリーヌの周りに巻く素材も、きちんと考えられている。周りの部分はフランス語で「シュミーズ(=洋服)」という。テリーヌの中身に洋服を着せることで、更に魅力を引き出す重要な役割を担っているのだ。 仔羊に巻かれていたのはベーコン。

「温かいテリーヌにしたので、野菜で巻くだけだとやや物足りない。ベーコンだったら薫製の香りもあるし、旨味もプラスされる」と松澤さん。さすが計算されている。

「陽はまた昇る」はタナ主体。
フランスのブドウ栽培地の中では年間の雨量が多いフランス南西部マディラン地方の主要葡萄だけに、雨の多い日本でもうまく育つだろうと思い、この品種を植え始めたそう。この葡萄の良さを生かすためシンプルな造りをこころがけた。結果、タナ種の持つ果実味や酸味、渋味の力強さはしっかり感じられつつ強過ぎない、調和のとれたワインとなっている。 

「5種のフロマージュのミニテリーヌ」

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ブリードモー、フルムダンベール、ミモレット、サントモール、エポワスというフロマージュの王様が奏でるハーモニー。テリーヌの断面は、絵画のように美しい。 ここで、ココファームの方からサプライズ!なんと特別にデザートワインを持ってきてくれた。

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「またやろうね」
琥珀色に輝く極上の液体に、思わず顔が緩む。なによりネーミングが最高!

「白桃のフレッシュコンポートとフランボワーズのテリーヌ ピスタチオのアングレーズソースとグラスバニーユ」

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「旬のものなので、火をいれずに造り、フレッシュに仕上げた」という季節感溢れるデセール。

「小菓子 食後のお飲物」

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自分で中身を選べるのが楽しく、食後のお喋りも思わず弾んでしまう。 

おなか、満腹寺。

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今回印象に残ったのは、テリーヌの多様性。前菜からデセールまで全てテリーヌという演出は、一見「くどい」と思われそうだが、全くそんなことはない。 はじめに支配人の齋藤さんから「先入観を取り払って、自分の舌でマリアージュを探してほしい」とナビゲーションがあったように、日本ワインへの寄り添い方も多様かつ新鮮だった。

前例にない新しいマリアージュを発見できるのは、実験のようで楽しいもの。日本ワインは「日常に寄り添う日本ワイン」であると同時に、様々なシーンに合わせた楽しみ方ができる可能性があることを再認識した会だった。

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レザンファンギャテ松澤さん、齋藤支配人、スタッフの皆様、ココファームワイナリーの柴田さん、石井さん、そしてゲストの皆様 ありがとうございました!

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