常温でひと夏越した赤ワインは飲めるか

「秘密は女を美しくする」
たしかに、と膝をうつこの名言は、漫画「名探偵コナン」に出てくる美女ベルモットのことば。

さらに、私が敬愛する山口路子先生も、ブログのなかでこう書いている。
「もともと自分自身の日常を不特定多数の人にさらけだすことに快感を覚えることはなく、むしろ「秘」に快感、なので、私にとってさらけ出し方は重要な問題だったのです。」

ちなみに、ことしの春から私設秘書的ポジションで路子先生の仕事のお手伝いをさせて頂いている。
嬉しいことにお会いする機会も増えたけれど、いつまでたっても”不可侵領域”のある美しいひとだ。

”秘密 がもたらす恩恵をうけたいなら、自分自身の生活をさらけ出したこのブログは、あきらかに逆効果だと思う。とくに食の記事が多いブログは危険。だって、食べ物は、自分自身を形づくるもの。
あの『美味礼讃』を書いた稀代の美食家ブリア・サヴァランだって、「ふだん何を食べているか言ってごらんなさい。そうすればあなたがどんな人か言ってみせましょう」と言っていた。

そう、私だって、へたな料理の写真を世間にさらして恥ずかしい思いをするのは嫌なのです。
できれば、うまくできた料理の写真だけ公開して、「わたくしはできる人なのです!」と声高にアピールしたい。

けれど、わたしの一部が「自分の軌跡をのこしなさい。感じたことを、記録せよ」と叫んでいるのが聞こえる。
これが、わたしが「記録魔」である理由だ。

この日は、「彼(←料理が得意)に美味しい料理を作ってもらっていてばかりでは、スーパー主婦への道は遠のくばかり。でも、得意料理もないし……何を作ろう」と頭を悩ませていた。
技術がままならないならば、ボリュームに頼るしかない。そう、ニクニクニク!!と考えたわたしは、日本が誇る国民食、すき焼きをつくることにした。

でも、すき焼きって、どう作るんだっけ。作ったことないや、とクックパッドのレシピを検索。
さいきん気合いをいれて月額300円のプレミアム会員になったので、レシピを人気順で並べ替えができて便利。ますますお世話になっている。

メニューは決めた、肉も奮発して買った。が、作ろうとして肝心のすき焼き用の鍋がないことに気付いた。
すき焼きは、あの専用の鍋で食べるのが美味しいのに。

しかたがないので、ふつうの鍋で代用することにした。そして。
ああ、恥ずかしい。

鍋のふたをして煮込んだせいで、液体が煮詰まらずしゃばしゃばになってしまった。
なんだか見た感じ、ぜんぜん食欲を刺激されない。

20150901185440すき焼きというより、ごった煮である。

「すき焼き、失敗しちゃった!ごめんね。。」としょんぼりしていると、
ダーリンは、「大丈夫だよ!ちょっと待ってて」といって、キッチンへ。多すぎる煮汁を飛ばし、ぼやけた味を整えてくれた。
こうして無事すき焼きは救済され、美味しい夕飯にありつくことができたのだった。


ここからはわたしのお仕事。 
すき焼きの甘じょっぱい味に合いそう、と選んだワインは、イタリアのバルベーラ・ダルバの09年、イタリアのピエモンテのワイン。
でも、これは冒険だった。なぜならこのワイン、常温でひと夏越してしまったものだから。

20150901190136見た目にも、すでにレンガ色が入っている。香りや味わいにも異常なし。

日本の暑い夏を常温で乗り切れる強いワインは、そう多くはないだろうなあ、と思いつつ、そのまま置いていても仕方がないので、思い切って開けてみることにした。
そして分ったことは、ワインの常温保存はありだ、ということ。教科書には、ぜったいに書いていないけれど。 
逆に、ほどよい熟成感がすき焼きとマッチした。

きっと、このワインは、”熟成のタイムマシーン”にのったにちがいない。
過酷な環境におかれることで、ふつうの熟成スピードよりずっとはやく熟成したのだ。

もちろん、熟成をコントロールするのは難しいし、スペースがあるならワインセラーで保管するに越したことはない。
偶然から生まれた発見、それを必然にするのは難しいもの。

でも、もし家に常温保存で眠っているワインがあったら、あきらめずに開けてみると、意外な発見があるかもしれない。