たくさん食べるとわかっているときは、着物はきないのだけれど(帯が苦しいから)、この日はたまたま気分がのった。
(顔がこわいよ、というつっこみなはしで)
そしたら、壁に茶花が飾ってあるものだから、すっかり嬉しくなってしまった。
「岐阜で「Satoshi.F」という店をやってたサトシくんが、銀座に店を出した」んだって。
切り立ての白木のにおいが漂ってくるような、すがすがしい空気。
カウンターのみ6席という、まるで自分たちのために用意されたと錯覚するような、手あかのついていない空間は、目が覚めるようだった。
自家製かんずり(トウガラシを発酵させたもの)を混ぜ込んだという黒豚前脚のチョリソー
コースで頂くお料理はどれも洗練された珠玉の一皿ばかりだけれど、特に印象に残ったのは、九条味噌づけの猪バラ肉……これは2週間浸けているそう。
合わせたのは、なんとスペインのモナストレル。ラベルに描かれているのは、桜だという。
驚いたのは、これまでのワインがずっとクラシックなブルゴーニュやボルドー中心だったから。
華やかな赤果実がはじける明るいワイン……猪の脂と、恐ろしいくらいに、合う。
鮑のリゾットが美味なのはもちろん、この影に、見蕩れてしまう。陰影礼讃の世界だ。
尾長鴨とブルゴーニュの王道マリアージュもよかった。
お水のグラスにいたるまで美しく、ひさびさに総合的な美の空間を堪能した夜だった。
(2017.1.26訪問)
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