肉食女子でよかった「Casa Julian」

この日はまたまたサンセバスティアンからタクシーで30分ほどかけて、トロサという街に来た。目的は、炭火焼のお肉が有名な「Casa Julian(カーサ・ジュリアン)」。

13時半の予約までに小一時間あったので、街中を散歩してみることにする。観光客もあまり見かけない、北スペインの田舎町。スペインというよりはドイツやアルザス地方のコルマールを彷彿とさせる、木組のかわいらしい家が立ち並んでいる。花は綺麗に手入れされており、治安の良さがうかがえる。

トロサの竹下通りともいうべき、両脇に店が立ち並んだ賑やかな通りを歩いていると、なにやら人だかりができており、大合唱が聞こえてくる。野次馬根性で近づいてみると、少人数の楽団を街の人が取り囲み、大声で歌っている。バスクの歌だろうか。皆手抜きなしに、高らかに歌い上げていた。

街行く人をみると、女性はさり気なくお洒落した人が多い。子育て中のお母さんは着心地のよさそうなワンピースを小粋に着こなし、太ったおばあちゃんでも、明るい色の洋服を着て、まだまだ女を愉しんでいる様子。 
バルには、ベビーカーや小さい子を連れた家族がたむろし、子どもを遊ばせる横で親がふつうに飲んでいる。日本ではあまり見ない光景だ。


「Casa Julian」に入ると、入り口付近は雑然としており、知らない街の古い小さな食堂にうっかり入ってしまったような気持ちになる。気にせず突き進むと、奥のスペースは思いのほか広く、焦げ茶色の木製のテーブルが並んでおり、バスクカラーのナプキンが、気分を盛り立ててくれる。

ここの名物はチュレタという、熟成リブロース肉を炭火焼で焼き上げた豪快なお肉。肉を焼き上げる釜が店内にあり、したたる脂と肉の塊を見ながら食事していると、自然と力が湧いてくるよう。

スターターのサラミととろける生ハムの圧倒的な旨味に、ここのお肉は期待できる!と胃がきゅるきゅる音を立てる。

アスパラの穂先、ハート型のレタスで優しく胃腸を整えたところに、巨大なお肉が運ばれてきた。

男性女性で量が違う。男性用には、超巨大Tボーンで、迫力満点。私のは、もっと赤身の部位で、少なめとはいえ200gはゆうにありそう。

噛めば噛むほど湧き出る、ジューシーなエキス。これでもか、というほどに詰まった爆発的な旨味。野性的で豪快な、だけど美味しく食べることを知り尽くした人のみが焼ける、至高のお肉。 
でも、半分の量で満足。これをぺろりと平らげる外国人を見てると、またしても人種の違いを実感する。


ワインは、スペインにきたら1度は飲みたかったVega Sicilia(ベガ・シシリア)の「Valbuena 5°」、2009年。日本だと高価だが、ここでは100€強とリーズナブル。

まだまだ若々しく熟したプルーンなどのフルーツ主体、樽のニュアンスはワインによく溶け込み、タンニンは滑らか。かなり長熟しそうな、がっちりとしたワインである。チュレタには最高の相性だが、2人で昼から1本飲むにはヘビーで、1/3ほど残ってしまった。


怒涛のように食べて飲んで食事は珍しくさくっと1時間強で終った。満腹を通り越して、もはや苦しい。 
ああ肉食で良かった、としみじみ思いつつ、もうお肉も赤ワインもしばらくいいや……と突き出たお腹をさすりながら、帰路についたのだった。