今年一番のワイン本

今月はよく本を読んだ。

ここ一年は、本や映画や絵を見るひまがあったら、勉強にまわそうと、
そっちの世界とは意識的に距離をおいていたのだが、とある記事を読んでから、考えが変わったのだ。
ナチュラルワインの輸入会社ラシーヌの塚原正章さんのブログで紹介されていた、ジェイミー・グッドの記事だ。
題名は“Advice for young winewriters”

9か条には、まさに私のような駆け出しのライターに対する有益なアドバイスがつまっている。
その1、2条は「とにかく読め」。それは、ワインに関する記事に限らない。うまい文章を書こうと思ったら、小説を読み耽らないわけがないだろう。読む時間がないのは、退屈なワイン記事ばかり書いているからだ、と。

5条も心に刺さった。「早く書け。芸術家きどりをやめろ」。 
耳が痛い。
少し前に知人から言われた言葉を思い出す。 
飲み会の席で、「はづきちゃん(彼女は私を昔のペンネームで呼ぶ)の文章は、時間がある人にしか書けないよね」という趣旨のことを言われた。つまり、とにかく量を書くために、1記事にそこまで時間をかけずに「かきちらす」人と、1つの記事に自分のリソースを最大限さく人(締め切りまで粘る)。 
原稿料は決まっているから、後者はそれだけ効率が悪いという見方もできる。そうなんだよ、だから私、全然儲かっていない……新たに仕事を探そうかと本気で思うが、そうするとますますいっぱいいっぱいになるんだろうなあ。
もちろん、自分を芸術家などと大それたことは思わないけれど、せっかくなら自分が書いた片鱗を残したい、と推敲していると、どうしても時間がかかってしまう。
それで書けなくなると、「書くための読書」という免罪符を持ち出し読書に逃げているわけだが、さいきんすごい本に出会ってしまった。

マット・クレイマーさん(きゃーっ、と心のなかで黄色い声)!!
聡明な塚原さんが好きなワインライターというので、すごい人なのだろうと思って検索したら、立花峰夫さん(ワイン業界の重鎮)のアマゾンレビューがこれまたすばらかったのでポチり(ちょっと高かったけれど、えいっ)。


(背後に猫足かすめる)

『マット・クレイマー、ワインを語る』

いやいや、こんなに面白いワイン本ははじめてだった。買ってよかった。
日本で売られているワイン本は、繰り返し読みたいと思える本が少ないけれど、この本は、咀嚼すればするほど旨味がでてくる肉のように、マット・クレイマーさんのワイン人生が凝縮されているという感じがする(すでに2巡目に入っている)。

おどろくのは、ワイン自体のことにとどまらず、まさに帯に書かれているように「機略縦横」であること。
これは、ワインの味わいを花や果物にたとえたり、分析することだけに注力する人(ちょっと前の私)には書けない文章だ。

20年後、いや30年後、私にもっと深みが出たら、こんな文章をかけるようになるのだろうか。
なりたいなあ……と思って、もうすこし、周りの世界に目を向けようと思っている2017年の暮れなのだった。

How to succeed as a wine writer by writing boring articles(退屈な記事を書いてワインライターとして成功する方法)” も秀逸なので、セットでご一読を(日本語の、塚原さんによる記事はこちら)。

マット・クレイマー、ワインを語る

さいきん20、30年後のことばかり言ってる気がするなあ……