きものを着ない勇気

今年はきものにどっぷりの1年だった。
1年前の新年の抱負で、今年はもうどっぷり英語でワインに没頭する1年になりそう、と書いていたけれど、正直、きものが楽しくて仕方なくて、きものの1年という印象の方がつよい。

自分で着れるようになると、もう洋服は着たくない、と外出はほぼきものになり、海外もだいたい和服で過ごした。

今ふり返ってみると、なんだか鼻息荒くきものをきることに躍起になっていた気もする。

それを気づかせてくれたのは、11月のオーストラリア出張だった(ワインの取材)。

「私はふだんからきものなんです!」とオーストラリアもきもので行こうかと思ったが、今回はグループ行動だし、迷惑になるといけないのでオーガナイザーの方に確認したら、
「ワイナリーおよびブドウ畑訪問時は、OH&Sの関係で、NGとされると思います。一旦ホテルに戻ってからディナー、という場合は、ぜひ和装でお出ましください」と返答があった(そりゃそうだ)。

OH&Sとは、労働者の安全と健康を守るための規格らしい。オーストラリアでは、欧州等に準じて、そのルールが厳しいという。
ワインにはおしゃれなイメージがあるが、ワインづくりは肉体労働だし、畑しごとは農業だ。たとえ作業を手伝うわけではなくても、そういう場に取材で行くのに、たしかに和装はそぐわない気がする。

それで、家にあった昔のボロをかきあつめ、昼は洋服夜は浴衣で過ごしたわけだが、ワイナリーにはきもので行かなくてよかったと、あとから思った。

たとえカジュアルな浴衣であろうと向こうの人は和装=礼装とみる。たとえば、日本ではいいレストランには浴衣で行けないが、海外では浴衣で行っただけでサービスがぜんぜん違う。 
今回のような仕事では、きっといらぬ気を使わせてしまっただろう。実際移動も多かったので、足手まといになっていたかも。

着付けを教えているある女性は、ほぼ毎日きものを着るために、洋服はほとんど処分したと言っていた。それでも子どもの学校の手伝い(たとえば、椅子を並べたり、体を使う仕事)をするときのために、そのためのコーディネートを1組残しているという。

たしかに365日着物はかっこいい。
だが、皆が和装だった昔と違うのは、きものをきていることが今は特別だとみられること。
きもの生活をしている人にとっては「いつでも和装」というのは普通のことかもしれないが、周りはそうはみない。
余計な気を使わせないために、きものをおやすみすることを選択できることも、ひとつの勇気だと思った。

肩の力を抜いて、きものとつき合っていきたい。



(Photo by  Kimberley Low / Wine Australia)