再会の喜び、世界のTATEHANAになった「舘鼻くん」

レディ・ガガの「ヒールレスシューズ」の生みの親であり世界が注目するアーティスト、舘鼻則孝(NORITAKA TATEHANA)。

青山にある岡本太郎記念館で開催中の展示「呪力の美学」に足を運んだ。

今回の展示は、あの岡本太郎×舘鼻則孝という、時間軸をこえたコラボレーション。もともと岡本太郎のアトリエ兼住宅を改築した記念館に、舘鼻作品がならぶ。岡本太郎記念館で他のアーティストが展示会を開くことは、まずないというから、貴重。


TAROにNORITAKA。そこにいるだけで身体の奥底が熱くなるような密度の濃い空間。 
舘鼻さんは「作品はコミュニケーションツール」というが、過去の偉人ともコミュニケーションできるアートに、あらためて無限の可能性を感じる。


二階部分、赤と黒の部屋には、いたるところに触手がはえていた。ガガのサイン入りヒールレスシューズや、下駄をモチーフにした作品からも触手……夢にでてきそうな、ほとばしるエネルギーのかたちに圧倒される。

(右の、ヒールレスシューズはガガの直筆サイン入)


東京藝術大学では染織を専攻し、着物を自分で染めたり下駄を造っていたという舘鼻さん。遊女の研究にも力をいれ、あの「ヒールレスシューズ」は花魁の高下駄から着想を得たそう。

ここからが驚き。いまでは世界的に有名な彼だが、なんと、中学の同級生なのだ。 
約15年ぶりにあった舘鼻くんは、すっかり大人の風格と、ちょっとしたオーラをみにまとっていた。舘鼻さん、というのも他人行儀でこそばゆく、舘鼻くん、というのも馴れ馴れしいような気がして、タメ語と敬語の間で、しばらくへどもどしてしまった。

ただこの日、私は、とにかく嬉しかった。 
舘鼻くん(と呼ばせてもらう)に再会するきっかけになったのは、NHK Eテレの『日曜美術館』。その日は樂茶碗の特集だった。
お茶を習い始めてから焼物にも興味が出てきたのと、一度京都でご一緒させて頂いて以来ひそかにファンの16代樂篤人さんが出演するというので、楽しみにテレビをつけたのだった。 
樂家450年の歴史と茶碗の宇宙に感嘆し、篤人さんが作品づくりにとりくむ様子もみれて満足してテレビを消そうとしたところに、現在開催中の展示として「呪力の美学」と舘鼻くんの名前が出たから驚いた。そして、展示にいくことにした。

何がそんなに嬉しいかって、中学校時代にとくべつに仲良くなかったわけでもなし(笑)、こちらから「舘鼻くんに会いたい!!」と猛烈アプローチしたわけではないのに、自然に存在を知り、15年のときを経て、また人生が交差した巡り合わせが嬉しいのだ。 
なにより昔おなじ学校に通いおなじ空気をすっていたひとが、こんなに大物になって世界で活躍しているということが、なんともいえず誇らしい。「わが町からオリンピック選手が出たゾー」とたれ幕をかかげる町内会のひとの気持ちって、こんな感じなのかな。

ひさびさにあい、昔話といまの話に華が咲いた。去年はフランスで文楽の舞台も監督したり、さいきんでは和の文化を発信する仕事にも力を入れているという。 
ちょうど私もその前日に国立劇場で文楽をみて感動したばかりだったから、そんな何気ない偶然の一致もうれしかった。


淡々として理知的で、泥臭い感じがいっさいしない彼だが、「ここまでくるのは大変だった」とぽつり。その”大変”の中身は、あえてきかなかった。かわりに、 彼の作品に、つよい生命の炎を感じた。 
外にでると、予報はずれの雪がちらついていた。寒さは感じなかった。