異色のソーテルヌ、第一級シャトー・ギロー

少し前になるのですが、モトックス主催のChateau Guiraud(シャトー・ギロー)のセミナーへいってきました。

シャトー・ギローといえば、ソーテルヌの格付け第一級シャトーで、お隣さんは特級のシャトー・ディケムというテロワールにも恵まれた超優良生産者。今回のセミナーは7〜8名の少人数だったので、ブランド・アンバサダーであるダヴィッド・オルノンさんからじっくりお話を伺うことができました。

シャトーギローの特徴としては、ビオロジック栽培。SO2の使用も最小限に抑え、補糖も禁止。畑は1996〜2007年にかけてビオに転換し、2011年に格付け1級シャトーのなかで最も早く有機認証を取得しました。

このビオロジック栽培がソーテルヌの生産に及ぼす影響の話がとても興味深く、勉強になるものでした。
ソーテルヌの独特の風味を生みだすのはボトリティス・シネリア菌(貴腐菌)ですが、貴腐がつくのは完熟したぶどう。5日間くらいで一気に変化が見られるそうです。


※配布資料より

農薬散布された畑では、この貴腐菌の動きがおそくなり、貴腐がつくのをまっているうちに葡萄自体が過熟してアロマや酸が消失し、べたっと甘いスタイルのソーテルヌになりがち。
一方、ギローのビオに転換した畑は、ぶどうの木の生命力が強く農薬散布しないので、ボトリティスがつくのが早いそうです。そうするとちょうど完熟のタイミングで菌がつくので、フレッシュさや酸味を残したスタイルになるのだそう。

また、ソーテルヌの収穫は、4〜6回ほど畑を回って貴腐菌のつき具合を見ながら粒単位で手づみ収穫していきます。とっても手間がかかるから価格が高いのです。たとえば2014年の収穫期は9月17日〜10月29日と1ヶ月以上。収穫に時間がかかるということは、それだけ降雨によるリスクなども出てきます(収穫期の多量の雨はぶどうにとってマイナス)。 
貴腐菌が早くつけばそれだけ早く収穫でき、雨のリスクなども抑えられるということ。最近の例だと雨の続いた2012年、雨がたくさん降る前にかろうじて1回収穫でき、ワインを生産できた(それでも例年よりは激減)シャトー・ギローに対し、イケムでは2012ヴィンテージの製造を中止したそうです……。無念ですよね。。

試飲アイテムは4種類。

G・ド・シャトー・ギロー 2015  
希望小売価格:2,500円(税抜き)


ソーテルヌだけど辛口白も造っているのに驚きました。貴腐菌がつく前の完熟したぶどうをワインにするそうです。オルノンさんは「フレッシュでチャーミングで親しみやすく複雑すぎないのが魅力」と仰ってましたが、2500円なら十分に複雑です!これは家に数本買っておきたい……。


白い花や白桃、エキゾチックフル—ツ(マンゴー)、柑橘などフルーツの嵐に、心地よいバニラ香。酸味とミネラルも豊かで塩味、スパイスも感じるので食事にも万能に合わせやすそう……。
特筆すべき樽の甘やかな香りは、貴腐ワインに使用した樽を使っているから。

樽はだいたい3年サイクルで買い替えだそうで、ざっくりですが、
1年目→グランヴァン(シャトー・ギロー)
2年目→セカンド(プティ・ギロー)
3年目→辛口白(G)
と使うそうです。贅沢!とにかく2500円(税別)という価格に驚愕!

プティ・ギロー 2013
希望小売価格:2,500円(税抜き)


セカンド・ワインという位置づけですが、グランヴァンになりそこなったぶどうをかき集めて造るのではなく、プティ・ギロー用の畑があるというところにこだわりを感じます。

香りをかいで……ああ。このオレンジマーマレードのような独特の風味、まぎれもなく貴腐です。幸せ……。 
アフターにジンジャーのようなホワイトスパイスの余韻がありました。

特筆すべきは、フレッシュさとミネラル。この2つのキーワードは何度も出てきました。オルノンさんが「ソーテルヌであってソーテルヌではない。ソーテルヌ嫌いな人もOK」というのがわかる気がします。塩気のある料理やエスニックなどスパイシー料理にもおすすめだそう。


さて、いよいよグランヴァンの垂直試飲です。わくわく。

シャトー ギロー 2014
希望小売価格:9,450円(税抜き)


ここでもキーワードは「fresh」「pure」。それに「complex」「rich」「gastronomic」というワードも飛び出しました。

マンダリンやタンジェリンのようなオレンジ系のアロマと、プティ・ギローより圧倒的に複雑な味わい。ちょっとスケールが違う感じがします。 
よく甘口ワインの売り文句に、「酸があるので甘くてもべたっとしない」というのをよく聞きますが、このギローは酸があるとかないとか一切考えを放棄したくなるような、なんとも美しく瑞々しい味わい。とにかく甘口ワインというくくりを越えた芸術品のような味わいです。こういうのを、「余韻が長い」というんだなぁ…としみじみ。いや美味でした。

オルノンさん「50年は熟成するけど、今飲んでもOK」とのこと。わかる気がします、時とともに違う魅力が出てくるだろうけど、この水をはじく赤ちゃんのほっぺたのような瑞々しさは、今飲んでこそな気がします。


シャトーギロー 1988
希望小売価格:11,900円(税抜き)


今でも魅力的なシャトー・ギローが熟成するとどうなっちゃうのでしょうか。書いているうちにお腹がすいてきました。そう、ギローはとてもガストロノミックなワインだとオルノンさんは言います。

良い色……

瑞々しかった2014年に対し、1988年は、サフランやエキゾチックなフレーバー、オレンジの皮のようなビターなニュアンス、アフターに甘いスパイスが感じられ、第三アロマばんばんの複雑の極み!やっぱり熟成させるのもいいな……と気持がゆれます。


甘口のソーテルヌに合わせる定番といえば、デザート?塩気のあるフロマージュ?フォアグラも鉄板ですよね。 
ノン、とオルノンさんは不敵に笑います。なんと彼のおすすめは、ローストチキン!ホームパーティーでどーんと丸焼きのチキンが出た時に、おもむろにこのワインを出すそうです。すると、はじめは皆「えっ正気?」という顔をするものの、合わせてビックリ、最終的にはチキンよりワインが足りなくなるほどの人気だそうです。これは試してみたい……。

4種類じっくり試飲してみて(半ば飲み干して)、何度も「フレッシュさ」「ピュアさ」という言葉が出たのがよくわかりました。グランヴァンはそこに「複雑さ」「リッチさ」「ガストロノミック」などが加わり、より高い次元にいくイメージ。
そして抜栓しても辛口の白で冷蔵5日、甘口は2週間程度は持つということなので、お店でも使いやすそう。

「白に金のラベル」が主流のソーテルヌのなかで、ナポレオン1世をイメージした金と黒のラベルを採用したというのも、他との違いを感じさせるエピソード。シャトー・ギロー、さすがのクオリティでした。

(輸入元:モトックス)


ワインテイスター大越さんのモダンなオフィスにて、ダヴィッド・オルノンさんと。 
(ソーテルヌのイメージでオレンジ色の帯にしてみました)