独りで行った陽気なお祭りでの小話

少し前の週末、代々木公園で開催されたスペイン祭り「フィエスタ・デ・エスパーニャ」にひとりで出かけた。
日本最大級のスペインフェスタらしく、会場にはスペイン料理やワイン、物販ブースが立ち並び、屋台には長蛇の列。特設ステージはフラメンコや陽気な音楽で盛り上がっている。


目的はスペイン北部にある美食の都バスクのワインセミナー。知人が講師をつとめるのと、夏に行ったバスクの記憶を呼び起こしたくて、スペインの風を感じにいったのだ。

確かに感じた。

が、帰り際にはなぜかアジアの風に吹かれ、脳裏で中島みゆきの「地上の星」が流れていた。


こうなったのには経緯がある。

特設テントで開催されたセミナーでは、バスクのワインや料理の話でバスク気分に浸り、チャコリ(バスクの名産ワイン)を高いところから注ぐパフォーマンスを目で楽しみ、バスクのワイン4種に舌鼓をうった。

「やっぱりスペインはいいな〜」とほろ酔い気分で会場をぐるり一周(このときは、まだスペイン気分)。

西麻布にある有名スペイン料理店「フェルミンチョ」の屋台でいかすみのパスタパエリアとシェリー酒を買い、フラメンコを横目にひとりで飲んでいた。
ちなみ普通のワインでなくシェリー酒を買ったのは、同じ500円なら度数の強いシェリーのほうが酔えるだろうという貧乏根性からである。

パエリアがなくなったので、さてもう一回りしようとアモンティリャード(シェリーの種類)片手に人ごみの中を歩いていたら、
ばしゃっ!
「あっすみません!」加害者はバツが悪そうに足早に去っていったが、私のクリーニングからおろしたてのウールのコートが、シェリー色に染まってしまった。

赤ワインでなかったのが幸いだが、「ごめんですむなら警察いらないよっ!」
と半ば死語のような台詞を心の中で吐きながらも、覆水盆に返らず。

すっかり気分が萎え、人ごみから戦線離脱することにした。
並ばなくても買えるたこ焼きやフランクフルトでも買おうかなぁ……と思っていたら、広場の隅に、毛色の違う屋台群がある。

スペインフェスタの集客にあやかろうとしたのか、アジアフェスティバルもひっそり併催されていたのだ。
しかも、私のような戦線離脱した人の溜まり場となっているのか、それなりに人がいるではないか。

屋台にはガパオライス、フォー、インド料理などエスニックフードが並んでいる。どこもそれほど込んでいないが、特にがらがらだったインド料理の屋台でチキンを頼むことにする。

(なかなか美味しい。なにより待ち時間ゼロが嬉しい。)

残っていたシェリーとカレー味のチキンがまた妙に合って、ちゃっかり満喫している自分がおかしくなり、思わず笑いがこみ上げてくる。

ひたむきに生き抜くアジアンパワーに励まされ、前向きな気持で会場を去り、
帰宅後、コートから漂うシェリーの残り香に、再びスペイン気分に引き戻された。 
そして「やっぱり陽気なお祭りは、ひとりで行くもんじゃないなぁ」そう独りごちるのであった。