眠れる下駄が復活、丸屋履物店の職人技

サイズの合わない下駄や草履がたまってきた。
手放そうと思ったが、「鼻緒を調整すれば履けるよ」という知人の一言で、近くでやってくれそうなところを探したら自転車で10分ほどのところに、和装履物専門店を見つけた。

旧東海道の宿場町があった北品川には、まだ昔ながらの街並みが残っている。丸屋履物店もそんな風情ある商店街の一角にあった。

スーパーで買い物ばかりしている私は内心ドキドキしながらお店に入り、
店の奥で作業をしている親父さんに「すみません、下駄と草履の修理をお願いしたいんですが」と声をかけた。
ドキドキに拍車をかけたのは、他店で買った履物の修理だったことだ。
一見さんがいきなりきて、自分の店の商品も買わずに修理だけ、というのも申し訳なく思ったのだが、親父さんは嫌な顔せず、当然のごとく引き受けてくれた。店の奥には畳があって、息子さんらしき男性が隣に座って、作業をしていた。

お願いする履物は4足あって、下駄の鼻緒のすげ替えが3足、もう一つは草履なのだが、靴底の釘が変な方向に飛び出して、釘の先が見えてしまっていた。
下駄のうち1足はかなり古いもので鼻緒がだめになっており、鼻緒を取り替えることになった。お店の店先には目移りするほどさまざまな種類の鼻緒がディスプレイされている。それはもともと雨下駄だったので、雨に濡れても大丈夫なものはありますかと聞いて、合皮らしき薄ピンク色の鼻緒を選んだ。 
帰り道、自転車をこぎなから後悔した。せっかく黒塗りの、粋な駒下駄なのだから、鼻緒もインパクトのある赤いものなど選べばよかった。雨に濡れても、などと無難なことをいっているから、おしゃれは二の次になるのだ……。

他の2足は、知人からいただいた下駄で、私を華奢な人物だと思ったのか、かなり小さめの下駄を送ってきてくれてこれまで履けていなかったもの。それらも見事によみがえった。1足あたり5分もかからずあっという間の職人技。


もともと下駄はかかとがはみ出るくらいが粋だというから、足先が入らなくても鼻緒を調節すればいいはずなのだ。
とは思いつつ、近くに馴染みの店もないし、延び延びになっていた履物のメンテナンス事情。
経年劣化した雨下駄も、この店がなかったら、ポイしてしまっていたかもしれない。

近くに頼れるお店があること、そしてダメになったら捨てるのではなく、修理しながらものを使い続けることの大切さをあらためて教えてもらった。