手にとるたびに響くところが変わる本は、一生手元においておきたい。
私にとって『ルバイヤート』がそうだが、悲しいかな開くのはたいてい虚無におちたときだ。
この夜響いた詩は二篇。
朝風に薔薇の蕾はほころび、
鶯も花の色香に酔い心地。
お前もしばしその下蔭で憩えよ。
そら、花は土から咲いて土に散る。
この詩は一足先に逝った彼女に。
そして残された私には……
人生はその日その夜を嘆きのうちに
すごすような人にはもったいない。
君の器が砕けて土に散らぬまえに、
君は器の酒のめよ、琴のしらべに!
それができたら苦労しないよ、とツッコミつつ。
『ルバイヤート』(オマル・ハイヤーム著、小川 亮作訳)より
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