日本ワインと天ぷらのマリアージュを探る@「料理通信」MEETUP

食・ワイン

和食に日本ワイン。難しく考えなくても、しっくりいきそうなマリアージュではある。
だが「天ぷら」というひとつのジャンルに特化して、徹底的に向き合う体験ははじめてだった。
その舞台となったのは、「料理通信」主催のMEET UP。テーマが日本ワインと天ぷらのマリアージュとなれば、見逃すわけにはいくまい。

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内容としては、サントリー日本ワインの地域違いのシャルドネ(山梨・長野・山形・青森)と、ヴィンテージ違い(2014・2015年)の津軽ソーヴィニヨン・ブランを飲みくらべながら、日本ワインの個性を紐解いていく。さらに、天ぷらと合わせることにより、日本ワインと天ぷらがどうマリアージュするか探る、というもの。

今回ナビゲートしてくれたのは、「てんぷら山の上 Roppongi」の寺岡副料理長。料理人でありながらシニアソムリエを取得し、ワインやその他のお酒にも精通している方だ。 

 

ワインと天ぷらの共通点といえば、まずは素材が一番であり、その個性を最大限に引き出し、表現していくという点ではないだろうか。ワインの世界でもよく「良いワインは良いぶどうから」と言われるが、天ぷらにおいても、素材がいまいちだったら、もう仕様がない。

素材を揚げる、という究極にシンプルな工程だけに、素材そのもののよさと、揚げる技術が問われる、ある意味シビアな料理のひとつだと思う。

 

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料理がひと息つく隙を狙っては、天ぷらとワインについて語ってくれた寺岡さん。

揚げる工程に必要不可欠なのは、なんといっても油。お店で使用している油の種類や、その特徴……はじめて聞く話で発見が多いなか、とくに驚いたのは、ワイン同様、油もブレンドが重要だということ。そして揚げ方にも地域性があること。お寿司なら「江戸前」などというように、地域性があるのはわかるが、天ぷらにもそれが当てはまるとは……「そういえば、天ぷらも寿司も江戸時代は屋台飯だったんだっけな」と昔にタイムスリップした気分になった。

さて、試飲したワイン6種類は、以下のとおり。

・地域違い(すべて2014年)
①青森・津軽シャルドネ:青リンゴやライム、一番すっきりライトなタイプ。「津軽だけに、ほんとにリンゴの香りがするのがすごい!」と一同驚いていた1本。実際、葡萄畑の隣にリンゴ畑があるそう。

②長野・上高井郡高山村シャルドネ:突出した要素がなく、ニュートラル。逆に、どの料理とも合わせやすい包容力により、一番すすみが早かった1本。

③山形・かみのやまシャルドネ:シトラスフルーツに優しい樽香が重なり、バランスに秀でた1本。栗との相性抜群!

④山梨・登美の丘シャルドネ:華やかな香りとふくらみのあるボディ。白い花の香りにシトラスフルーツ、バニラなどのアロマが幾十にも折り重なり、群を抜いて複雑な1本。しかし個性が強いだけに、天ぷらとのマリアージュ探しは以外と難航。

・ヴィンテージ違い
⑤津軽ソーヴィニヨン・ブラン 2015:品種の特性をうまく表現した1本。レモン、ライム、青りんごに混じるハーブ香が特徴的。いきいきとして透明感がある。鱧と相性良し。

⑥津軽ソーヴィニヨン・ブラン 2014:シトラスフルーツにくわえ白桃のような華やかなアロマ、品のよさと凛とした佇まい。2015年とだいぶ印象が違い驚いた1本。

 

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肝心のマリアージュについて。
まずは今回、「この天ぷらにはこれを合わせてください!」というスタイルではなく、ずらり並んだワインのなかから、自分で考え、自由に合わせられたのが良かった。
やはり、「この料理には…これかな?」と、自然に手に取るグラスが決まってくるのがおもしろい(そこで手に取る回数が多かったのが、②高山村シャルドネ)。

そもそも、天ぷらの美味しさの秘訣である「旨味」と素材の「甘み」は、一般的にはワインとはあまり相性がよくないといわれる。料理の旨味、甘みはワインの果実味を打ち消し、逆に酸味や苦みを強調する性質があるためだ。

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実際、とくに甘みの強かった南瓜やとうもろこし、薩摩芋とでは、どのワインを合わせても酸味が強く感じられ、とくに40分かけてじっくり揚げたという薩摩芋 with ブランデーは、もう甘みと香りが強すぎて並みのワインでは太刀打ちできそうもない 。もはやデザートワインか、ウィスキーが合いそう(「オールド・パー」が思い浮かんだ)。

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香りのつよいむかご、苦みのある鮎など突出した要素を感じるものとは、香りのよい樽香のあるシャルドネ(③④)は喧嘩をしがち。「わたしのほうが、香りいいでしょっ!」という声が聞こえてきそう……。たとえばむかごなら、土っぽさやミネラル感のある白/オレンジワイン、鮎ならシュールリーをかけたシャープな白など(それこそ、甲州の得意分野!)、共通する要素があるとマリアージュするのではないかと思った。

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比較的ニュートラルでふんわりとした食感を楽しむ鱧などは、生き生きした津軽ソーヴィニヨン・ブラン(⑤⑥)がレモンをきゅっと絞る役割となり、非常に相性がよかった。

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あとはあえて渋皮を残すことでほろ苦さとかりかりした食感がプラスされた栗と、ナッツやバターの風味のあるバランスのよいかみのやまシャルドネ(③)はばっちりの相性!おかわり!

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デザートは、旬のいちじくのゼリーにレモンの酸味が爽やかな一品。これには、度数低めのにごりデザートワインがサプライズで供された。
いやはや、ひとつのワイナリーでこれだけ網羅できるのは、さすがサントリーならでは。

ふー、お腹、満腹寺。

  今回つよく感じたのは、塩の万能さ。白ワインと合わせるときには塩をつけて食べると相性が良く、実際つゆを使ったのは黒まいたけの一回だけだった。マリアージュのひそかな立役者は、添えられた塩だったのかもしれない。

テロワールの個性に関しては、まだまだ経験値が少なく、日本の地域毎のテロワールを理解するまでの次元には行けないけれど、津軽シャルドネの青リンゴの香りには驚いた。個人的にも、もっと追求していきたい分野。

 

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お寿司や天ぷらはじめ和食に日本酒、はもちろん鉄板だけど、和酒のひとつの選択肢に日本ワインが加われば、より楽しみも広がるのでは、と思う。

11種類の食材と6種類のワインのマリアージュ実験による、学びの多いMEET UPだった。
料理通信様、ありがとうございました。

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