歌舞伎公演『仮名手本忠臣蔵』の第二部、5段目〜7段目。
早野勘平とおかるの悲恋にフィーチャーされた第二部です。
予習はこちらの本でばっちり。
『恋するKABUKI』
歌舞伎を見ずとも読み物として面白く、見た後なおさら楽しめる一冊。
「女の人生スゴロク」……清々しいほどの、波瀾万丈っぷり!
「あのとき色にふけらなければ……」と最期まで後悔しながら死んでいく勘平に対し、
数々の苦難にぶちあたりながらも、なんだかんだ順応していくおかる。
男は未練がましく、女は切り替えが早い(でも悲しむ時は、癪を起こすほどのショック!)、昔からのテーマ。これはもう、DNAの問題なのかも。
今回の目玉はなんといっても、尾上菊五郎と中村吉右衛門の共演ではないでしょうか……。
「この二人を同じ舞台で見れるなんて、ラッキーだよ!」とチケットを手配してくれた、歌舞伎通の友達も興奮気味。
とくに衝撃をうけたのは、はじめて見た中村吉右衛門の演技。
お茶屋で泥酔しているシーンから登場、白目をむいたようなへべれけ状態からの、
最後はきりっと忠心をみせる凄み……
大勢の観客が、たったひとりの演者に支配されるのを肌で感じました。
熱気でむんむんなのに、鳥肌。さすが人間国宝。
そして2代目吉右衛門と9代目松本幸四郎が兄弟だったことをはじめて知った私……
共演が少ないから、兄弟仲が悪いなどと言われている様ですが、
今回の『仮名手本忠臣蔵』では重要な役どころの大星由良之助役、
第一部では幸四郎が演じ、第二部では吉右衛門が演じていた……演じる役柄の方向性が似ているのでしょうか。
としたら道理で共演できないわけです。
鷺坂伴内(道化役で、良いキャラ!)役と大星由良之助役で共演したら、画期的なのに!
五段目の「鉄砲渡しの場」「二つ玉の場」
ここは勘平が猪と間違って人を殺めてしまう重要な場面ですが、
実際に火薬……火の匂いが立ちこめる香りの演出がありました。
香りを直に感じることで、一気に場面が身近に感じられるようになる。
最近はプラネタリウムなどでもアロマを組み合わせた演目がありますが、
香りをうまく使うと、記憶に残る演出になりうる、と感心した場面でした。
「難しい!」「わからない!」「高尚」と思われがちな歌舞伎ですが、
もとは民衆の娯楽だったことを思い出させてくれる、歌舞伎がもっと楽しくなる本。
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