「最近量が食べられなくって……」とため息まじりの義母、齢92歳。
とはいえ並みの女性よりは、よほど食べる。
半世紀前のことを、あたかも昨日起こった出来事のように話す義母は、
大正生まれという年齢を忘れるくらい、ぴんぴんしている。
そんな尊敬する義母が我が家にはじめて来るというので、
内心どきどきしつつ、年末の大掃除を前倒しするかのごとく、
家のすみずみまで磨き上げ、当日を迎えた。
(夜だし、多少ほこりがあっても、わかりゃしない……)
今年の2月から料理教室に通いはじめたとはいえ、料理歴1年ちょっとの私、
クラシックフレンチを好み、美味しいものに目がない義母の口に合う料理をつくるのは、正直ハードルが高い(高すぎる)。
そもそも、固いものと新しい味(創作系)が苦手というので、料理の幅がかなり狭まる。
悩みつつ考えたメニューは、つくり慣れた定番の、さしてオシャレでもないけど柔らかい料理の数々。(忙しくて、写真はなし)
・クレソンサラダ
・棒棒鶏と焼き茄子 ゴマのソース
・長ネギのヴィネグレット
・かぶのポタージュ
・メイン:シェフにおまかせ
・お土産に、マドレーヌ
ほんとうはかぼちゃのコロッケもつくる予定だったが、
「戦時中に食べ過ぎて、かぼちゃは見るのもいやなのよっ!」
と言われるのを恐れ、直前になってやめた。
メインは、我が家のシェフにおまかせ。
ふつうに飲んでもなかなかイケるピノノワールを1本丸々使った贅沢な牛肉の赤ワイン煮。
これが美味しい。玄人の味がする。
ナイフ不要な柔らかさにほっぺがとろけ、思わず義母も私も「おかわり!」
来客のいいところは、それにかこつけ上等なワインを開けられるところ。
Pavillon Rouge du Chateau Margaux 2004
パヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴー 2004
アルコールは飲まない義母をよそに、
ボルドーワインと牛肉の赤ワイン煮込みという、
The・正統派マリアージュを楽しんだのだった。
*
これまで「ええい、ままよ。」と刹那的な生き方をしてきた私。
でも、ここ最近、長生きしても、いいかも…そう思える様になった。
「あと62年あれば、それなりに何かを成し遂げられるかもしれない」
そんな考え方をできるようになったのは、
家族の存在と、92歳の元気な義母のおかげである。
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