サンセバスチャンでワインを買いに。

食・ワイン

サンセバスチャン滞在3日目。「きょうの夜はステーキを焼こう」ということになり、合わせるワインを探しに、ワインショップへ出かけた。借りたアパルトマンの目の前にある大きなスーパーマーケットでもワインは売っているけれど、どうせなら専門店でちょっといいワインを買いたい気分。

向かったのはVinos Ezeiza。100年以上の歴史のある、街で一番の老舗のワインショップらしい。

店に入ると、棚のワインを自由に品定めできるスタイルではなく、カウンターの奥に棚があり、店主が客の要望に合わせて候補を選んでくれる昔ながらの個人商店だった。様子を伺っていると、次々にお客さんが入ってきて、店の人と話をかわしながらワインを買っていく。

勇気を出して、「リオハの赤ワイン、30ユーロ以下、今夜食べる牛肉のステーキにあいそうなもの」と相談すると、「リベラ・デル・ドゥエロのほうがおすすめ」と返され、出てきたのが25ユーロの「La Loba」という名のワイン。ヴィンテージは2015年。
30ユーロ以下の棚にある赤ワインのなかでもコスパ最強で、マリア・クリスティーナ(5つ星ホテル)にも卸しているとか。

喜んでそのワインを買って帰り、店主の助言どおり1時間前に抜栓して夫と飲んでみた。

「……!」

思わず、二人で顔を見合わせるほどのスーパーフルボディ。筋肉むきむきのボディビルダーの姿が脳裏をよぎる。糖度の高いブドウから、色素やタンニンなどの成分を強めに抽出させて、さらに樽熟成で筋肉増強させた感じ。アルコール度数14%。もっと高く感じた。

「今年飲んだワインのなかで間違いなく一番のフルボディだよ……」
「こんなゴリゴリの赤、ひさびさに飲んだね……」
遠い目になる。我々は基本的に、キレイな酸と(赤なら)しなやかなタンニンを持つエレガントなワインが好きなのだ。

肉肉しい野性味があるから、お肉には確かに合うかなと思ったら、ステーキが思いのほか赤身であっさりだったので、赤ワインのパワーが肉を凌駕してしまう。

しかもこのワイン、テンプラニーリョ100%。テンプラニーリョといえばスペインの看板品種だが、単一品種で造ると、たとえばカベルネ100%のようには、マッチョなワインにはならないイメージがある。少しくらいの甘やかさとか、滑らかな質感を期待してしまう。

「これ、テンプラニーリョ100だよー」と言うと、「えっ。この世のすべてを憎んだテンプラって感じだね……。」と夫。

結局二人でボトル1/3も飲めなくて、コルクで栓だけしてお友達の家に持っていったら、その友達は「ヘラクレス(ギリシャ神話の)みたいー」と言って笑っていた。
ロバ……スペイン語で狼、という意味みたい。たしかにわかる。

長々と脈絡なく書いてしまったけど、要は、一本のワインを人とシェアすることに、新鮮な喜びを覚えたのだ。
異国の個人商店にワインを買いにいくようなちょっとした出来事があって、飲むときにも何かしらストーリーがあれば、例え味わいが好みでなくても、そのワインは印象深いものになる。なんでもないようなことだけど、やっぱり楽しい。

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