着物3年目の浮気

神様に「どこかひとつ、体のパーツを直してあげよう」と言われたら……なんて妄想を、昔からときどきして遊んでいる。
胸がほしい、くびれがほしいなどと考えた若かりし頃もあったけど、いま願いを叶えてもらえるとしたら、答えは決まっている。

……この外反母趾をどうかどうか直してください、神様。
「ヒールの履きすぎでしょ?」とよく人に言われるけど、中学生のころからそうだから、おそらく遺伝。ペディキュアが映える、こじんまりとした女性らしい足の人がほんとうに羨ましい。憎き醜き外反母趾め。そのうえ痛い。

30歳で着付けを習って、ほぼ毎日着物生活を目指すという極端に走ったのも、歩く手段としてのハイヒールをもう履きたくない、という部分も少なからずあった(付け加えるなら、窮屈な下着もストッキングも)。

それが3年目にして、心境に変化が訪れている。

相変わらず仕事やきちんとした会食のときは着物のことが多いが、最近グイグイとわたしを引き付けるのは……

美しい美しいシューズ。Comme il faut。
踵の高い靴とはもうきっぱりとお別れしたはずなのに、誘惑に負けて、あっさりと復縁。この靴は、駅の階段を登り降りしたりアスファルトの上を歩いたり、移動することが目的ではない。この特別なヒールを履くと、スイッチが切り替わるみたいに、「ただの一人の女」になれる気がする。

ハイヒールを履き続けるために必要なのは、足を健康に保つこと。神様には頼れないから、自分で頑張るしかない。そこで以前は面倒でしていなかった足のストレッチやマッサージとか、テーピングとか、できることを始めた。去年の夏に「ガサガサ踵よさらば!」と買ったはいいけどなかなか減らなかった足用のロクシタンのクリームも、近頃はお風呂上がりに入念にマッサージしているから、減りがすこぶる早い。顔のお手入れよりも手をかけられてる………まさにお足様様。

はあ、今ならSATCのキャリーの気持ちがよくわかる。
シューズ、空から降ってこないかなあ。