和のことはじめ。

きもの

三十路をむかえたことだし、ちょっぴり淑やかなたしなみを、とおもい茶道をはじめることにした。

まずは自分用の茶道具をもとめに、表参道にある「ことぶきや」に出かけた。

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1940年創業の老舗の茶道具屋さん。

表参道交差点の一角という絶好のロケーションにあるのに、今まで全然きづかなかったのが不思議である。
目的は、数寄屋袋(扇子や小物をいれる袋)。

実は「ことぶきや」に出かける前に、ほかのお店を物色してはいたのだが、小物は朱や赤のものが多く、青が好きなわたしが寒色系のものを手にとると、「それは男性用です」といわれ、しょぼんとすること多々。
お値段もそれなりにする数寄屋袋は「とりあえず」の妥協したくないので、購入を控えていたのだった。

 

ご夫婦で営んでいるらしく、店に入ると、感じのよい老婦人が案内してくれる。店内には古道具が所狭しと並び、すべてじっくり見ていればかなりの時間がかかりそう。

「数寄屋袋を探しているんですけど」
そういって出してもらったものは、やはり暖色系が多くはあったけれど、ぱっと目をひくものがいくつかあった。
迷ったすえ、「これは新しい柄なので、他のかたと重ならないですよ」という老婦人の一言に押され、「石畳角龍小花紋」と書かれたものに決めた。
(これは、のちのちまで控えておくように言われた)
少し光沢があり、上品で長く使えそうなのも決めてのひとつだった。

 

「わたし、今日からお茶をはじめたんです」
つい誰かにいいたくて、そう話しかけると、老婦人はにっこり微笑み、「長く続けていらしてね」とお見送りしてくれた。

 

ひととおり道具を揃え、満ち足りた気分の帰り道。
ぶらさげていた袋を、思わず前後にぶらぶらしてしまう。

普段は素通りする花屋の前でたちどまり、季節の花をみやる。

まわりの景色が違って見えた。それって……。

新しいことを始めるときは、恋のはじまりに似ている。

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