ぜいたくな、クチーナ・ポーヴェラ(貧者の料理)

食・ワイン

ワインを勉強していると、脳内世界地図がワイン地図にぬりかわり、地名をいわれると連想ゲームのようにその土地のワインを思い浮かべてしまうようになる。 
とくにイタリアは各州が独立した国のように多様性ゆたかで、きいたことのないような品種から個性的なワインも多くつくる国(そのため、イタリアはよくわかんなくて苦手、という人も少なくない)。

全20州のうち、ワインだけでいえば、マイナーな州もある。私のなかでは、リグーリア州がそれにあたる。 
リグーリア州といえば、観光では有名だ。ジェノベーゼで有名なジェノヴァが州都だし、世界遺産の海岸沿いのカラフルな村チンクエテッレなんて夢の国みたいにきれいで、フランスから車でドライブしてみたいエリアである(ペーパードライバーだけど)。 
だがワイン産地の印象としては、かなり影が薄い。銘醸ワインをじゃんじゃん生みだすピエモンテ州やトスカーナ州にはさまれて、息苦しそう。ワインが浮かばないと、郷土料理も浮かんでこないので、リグーリア州の食も想像がつかない。


そんなある日、リグーリア郷土料理を食べる会が開催された。リグーリア地方で修業した六本木「ブリアンツァ」の奥野シェフに現地そのままの伝統郷土料理をつくってもらうという趣旨で、あえて日本人の味覚に合わせて調整せず、現地そのままの伝統的郷土料理を作ってくれるという。「口に合わないかも」と入念に釘をさされるのははじめて。

チンクエテッレのイメージで、お料理も魚介をはじめ彩り豊かなものが出てくるのだろう、と胸を踊らせていたら……

みごとに茶色かった。じゃがいも、小麦粉、豆のオンパレード。トマトの赤に心が踊ったくらいだ。 
これを、クチーナ・ポーヴェラ(貧者の料理)というそうだ。ぜいたくなものは使わずに、手に入るものを最高においしく食べることに力を注いだ、マンマたちの知恵の結集。リグーリア州に限らず、イタリア料理の神髄といえるが、それをいいレストランで食べることに、究極のぜいたくを感じる。



(リグーリア州=海岸のイメージで、流水の着物に白い帯)

この日あつまったのは、「口に合わないかもしれない」という主催者のひとことに了承した食いしん坊たち。最年少は『生まれた時からアルデンテ』な平野紗季子ちゃん(平成生まれ……)。 
チーズたっぷりのフォカッチャをおかわりし「小柄なのによく食べるね」の声に「太ってもいいから食べたい」と返す彼女の目は本気だった……。

世の中には食いしん坊とそうでない人の2種類がいる。 
火入れをするまえの仔羊の塊に目を輝かせその匂いを嗅ぎに席をたつメンバをみて、そんなことを思ったのだった。

生まれた時からアルデンテ

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